お金を貯めるために働いているのに……
ある日智子さんが家に帰ると、
久美さんはキャバクラへ出かけるための準備をしていました。
今週は毎日キャバクラへ出勤していて、
朝方寝て夕方ごろに起きるような生活になっていました。
昼間のカフェには1度も出勤していないようだったので、
それを心配した智子さんが、
「カフェ、辞めちゃったの?昼と夜が逆転した生活になっちゃってるけど大丈夫?」
と聞くと、久美さんは、
「お客さんに飲食店経営している人がいてね、
その人にいろいろ聞いたら、チャレンジするなら早いほうがいいよって言われたの!
だからまずは、早くお金を貯めなくちゃ!」
と嬉しそうに言い、そのままバタバタと家を出て行ってしまいました。
久美さんの生活は智子さんが心配していた通りどんどん夜型になり、
昼間仕事をしている智子さんと、
顔をあわす時間はほとんどなくなってしまっていました。
そんな時、智子さんは知人から久美さんがホストクラブに頻繁に通っているとの話を聞きます。
その話を聞いた智子さんは久美さんに
「カフェの夢はどうしたの? 最近、ホストクラブに通ってるって本当?
そんな生活を続けてたら、お金なんて貯まらないでしょう?」
と言うと、
「うるさいなー。お金を貯めるために頑張ってるし、
それに、私が自分で稼いだお金を何に使おうと関係ないんじゃない?」
と、面倒くさそうに答え、そのまま家を出て行ってしまいました。
突然姿を消した妹
それから1週間、久美さんが生活している気配はありましたが、
智子さんのいる時間に家に帰ってくることはなく、
顔を合わせて話すことができないままになっていました。
そして1週間後、智子さんがいつも通り仕事から家に帰ると、
久美さんの荷物がごっそりなくなっていることに気が付きました。
部屋には「自立するので、家を出ます。鍵はポストに入れておきます。」
との書置きが……。
智子さんは急いで久美さんが勤めていたキャバクラへ行きましたが、
久美さんは先週いっぱいで店を辞めていて
その後のことは分からないと言われてしまいました。
友人、知人などにも協力してもらって探していたところ、
一度はホストクラブで久美さんを発見することができましたが、
うまくまかれて逃げられてしまいました。
智子さんはその店のオーナーに迷惑だと言われ
それ以降出入り禁止になってしまいました。
近くにいるはずなのに、どこにいるのか分からない
きっとまた近くのキャバクラで働いているに違いないはずなのに、
それがどこかも分からず多くのキャバクラの中から探すすべもない……。
智子さんは両親に相談をして、探偵に久美さんの家出調査をしてもらうことにしました。
調査員がしらみつぶしにキャバクラを探したところ、
久美さんはセクキャバで働いていたことがわかり、
ホストクラブにも週に1度は通っているようでした。
そして、繁華街近くのマンションで暮らしていることが分かりました。
智子さんは両親と一緒に、久美さんを迎えに行って、
もう一度、ちゃんと話をしたいと言っていました。
久美さんが自立をしたいと思い、
智子さんとの同居の家から出ることに問題はありませんが、
音信不通になり、どこで何をしているのか分からない状況を心配しない家族はいないでしょう。
家族だからこそ心配してくれるありがたさに、
久美さんが早く気が付いてくれるといいのですが。
(2018.09.28)