自分の行動をスタッフが知っているのはなぜ?
パートの女性に昨晩飲みに行ったのを知られていたことを、
克己さんは不思議に思いましたが、その時はあまり気にも留めませんでした。
しかしそれ以降、プライベートで行ったゴルフや飲み会についても、
病院スタッフ全員が知っているように……。
全員がどのように、何故知っているのかは分かりませんでしたが、
ゴルフの次の日は「院長、昨日は調子よかったですか?」などと聞いてきたり、
飲みに行った次の日には「アポ、そのままで大丈夫ですか?」と確認してきたり。
自分の行動がみんなに知られているのは明らかでした。
病院のスタッフの誰かが、自分のことを尾行して行動を監視しているのか。
それとも、自分の行動をどこかの誰かに調べさせている人がいるのか。
克己さんは、まずは、警察に相談に行き、被害届を出しました。
そして、顧問弁護士にも相談したところ、誰が犯人かがわからないと動きようがないと……。
克己さんは、どうしても犯人を探し出したいと思い、探偵に自分の身辺調査を依頼しました。
調査は思った通りの結果ではなかったけれど……
調査の結果、克己さんの周りを付け回しているような人影は見つかりませんでした。
しかし、病院のスタッフや院長の秘書に聞き込みを行ったところ、ある事実が発覚したのです。
院長の予定は基本的にはすべて秘書が把握していました。
そして、その秘書は、院長が60歳になった頃に一度
「前日のスケジュールが厳しい時は、翌日の午前のスケジュールは考えて入れてくれ」と
注意をされていたことも分かりました。
なんと、それ以来、院長の秘書が気遣い、スタッフにも院長の予定を共有していたのです。
しかもこれは最近に始まったことではなく、この2年はずっと同じようにしてきたというのです。
この結果を聞いて、院長は驚き「そんなはずはない!」と言っていました。
しかし、その秘書に自分の予定をスタッフに共有しているのかを確認したところ、
悪びれることなく「はい」と答えたそうです。
ちょっとした疑心暗鬼から、自分の病院のスタッフのことを疑ってしまった克己さんですが、
実はスタッフは院長である克己さんのことを思って行動してくれていただけでした。
克己さんは「お恥ずかしい」と言っていました。
院長とスタッフという立場上、なかなか同じ目線で話すことは難しいですが、
常日頃からコミュニケーションをとることは、どんな組織でも大切なこと。
今後は、スタッフを疑うようなことはせずに、
これまで以上にスタッフを信頼し、コミュニケーションをとっていけるといいですね。
(2018.12.03)