かわいがっている従業員が、まさか……
21歳の小岩井さんは、誰よりも早く出社し事務所の掃除をする真面目な青年でした。
眞治さんは、そんな小岩井さんを可愛がり、
食事はもちろん、何処に行くにも一緒に連れて行き紹介していました。
ある日、古くから務める事務員に
「小岩井さんが、備品を持って帰っているみたい」と相談されました。
話を聞いてみると、プリンターの用紙や乾電池、ドリップコーヒーなど、
大したものではありませんが、通常では考えられない速度で減っているとの事。
前の日に数を確認して帰り、翌日の朝見ると減っていることがあるので、
朝早く来ている小岩井さんが、持って帰っている可能性が高いのではないかと言うのです。
眞治さんは信じられませんでしたが、確かに経費は3か月前からかなり上がっていました。
そして、考え抜いた結果、月初の朝礼で、全員に言う形で注意喚起することにしました。
朝礼では「無くなっている」という直接的な言葉は使わず、
「減りが早いので、心当たりのある人は、使い過ぎに注意してください」
という程度に留めておきました。
そして、消えた従業員
その翌日、小岩井さんは出社しませんでした。
すぐに小岩井さんが住むコンテナを見に行くと、
小岩井さんの姿はなく、
仕事で使うようにと貸し出していたノートパソコンとスマホもありませんでした。
机には会社のETCカードが置いてあり、急いで裏の駐車場を見に行くと、
仕事用にカギを渡していた車も消えていました。
眞治さんは悩みに悩んだ結果、探偵に人探し調査を依頼することに。
小岩井さんが会社の備品を持ち出しているので、警察に届けることを躊躇していましたが、
調査をするにあたり、捜査願も出しました。
調査の結果、小岩井さんは高速道路のサービスエリアで発見されました。
車の中には持ち出したものが残っていて、小岩井さんは
「売って金にするつもりだった・・・
親方には良くしてもらっていたのに、裏切った…もう居られないと思った」
と言っていたそうです。
眞治さんは、とりあえず連れて帰って話を聞くとの事でした。
両手を広げて受け入れてくれる人がいても、
自分がそれに答える努力をしなければ、何も変わりません。
小岩井さんには、同じ過ちを繰り返す事なく真面目に働いて、真っ当に生きて欲しいですね。
(2018.12.25)