無理やり遺言書を書かされたという母
それからしばらくの間、これといった用事もなかったので、光さんは母と連絡をとることはありませんでした。
ところが、3か月ぶりに子どもを連れて実家に帰ったときのこと、母から
「ちょっと話があるから、外に連れて行って」
と言われました。
そして、散歩をしながら母から驚くべきことを聞かされました。
「耕司に無理やり遺言書を書かされた。
働くのが大変な大五郎に、家と土地をと思っていたけれど、
家と土地を耕司に相続することになってしまった」
光さんは、すぐに耕司さんを呼び出して、話を聞こうとしましたが
「お母さんが、そう遺言書を作りたいって言ってきたんだよ。
ボケちゃってて分かってないんじゃない?」
と言い、さらには遺言書を見せてほしいと言う光さんに対して、
「俺じゃないよ。ボケてて持っていること忘れてるんだろ?」と、
頑なに遺言書の存在を隠しているようでした。
最近、新車を購入したり、2週間海外旅行に行ったりと、
明らかに生活が派手になっている耕司さんに対して
(もしかしたら遺産を当てにして、仕事もしないで遊んでいるのでは?)
と光さんは不信感を抱き始めました。
遺産で大金が手に入る?
そして、遺言書の真実を知るためにも、
光さんは探偵に耕司さんの行動調査を依頼することに。
調査の結果、耕司さんは介護の仕事を2か月前に辞めていました。
そして、昼間はパチンコをして遊び、夜は飲み歩く生活。
知人や飲み屋の女性に「そのうち親の遺産で大金が手に入るから」と
言いふらしていたことも分かりました。
確かに母には痴ほうの傾向がありますが、
遺言書について忘れているとは思えないと感じた光さんは、
母のデイサービスの看護師さんにも話を聞くことに。
すると、母は仲のいい看護師さんに「遺言書って取り消しできるのかしら」と聞いていたそうです。
遺言書を書いた時期と、耕司さんが仕事を辞めた時期が重なることや、
調査で分かった最近の行動、そして母の証言をもとに、
光さんは遺言書の取り消しを請求するとのことでした。
生前の父から遺産相続をきっかけに兄弟間でもめごとを起こさないようにとしばしば言われていましたが、
せっかく両親が残してくれた財産を、
不当に手に入れようとしている耕司さんのことを許せないと光さんは言っていました。
不当な相続にならないように出来るといいですね。
(2018.07.03)