無理をしてでもバイトを続けて
雅由さんは、無理をしながら学生生活を続けていました。
4年生になると実習に加え、国家試験の勉強もいよいよ本格的に。
かなり忙しい毎日ではありましたが、それでも雅由さんは短期のバイトを入れる生活を
やめてはいませんでした。
学校の勉強を最優先にしながら、バイトができる日は短期バイトを入れる日々。
学校での雅由さんは成績も良く、「バイトをしているから」と言って、
学業に支障が出るようなことは一切ありませんでした。
しかし、無理をし続けていたこの生活のしわ寄せがやってきてしまいます。
それは、国家試験の2日前のことでした……。
夜、部屋で勉強をしていると急激な胃痛が雅由さんを襲い、吐血してしまったのです。
そしてそのまま救急車で病院へ……
緊急入院となり、雅由さんが退院したのはそれから5日後のことでした。
今まで苦労をして頑張ってきたのに、雅由さんは国家試験を受けることができなかったのです。
退院してからの雅由さんは、まるで抜け殻のようでした。
卒業式にも行かず部屋に閉じこもり、家族ともほとんど会話をしない日々が続きました。
玲実さんは、部屋まで食事を運び少しでも元気づけようとしましたが、
食事にはほとんど手を付けずに「ごめんね母さん」と、下を向くばかりでした。
両親に申し訳ないと
それから2週間後、パートから帰った玲実さんがいつものように雅由さんに「ただいま」と
声をかけに行きました。
すると、雅由さんは部屋にはおらず、雅由さんが大切にしていた荷物が全てなくなっていたのです。
そして机には「迷惑ばかりかけて、ごめんなさい」と言う書置きが……。
玲実さんは驚いて、雅由さんに電話をかけましたが、繋がらず……
すぐに夫に連絡をして、そのまま警察へ行きました。
夫からは「警察がすぐに動いてくれなそうならば、俺の帰りを待たずに探偵に探してもらいに行くように」と
言われていたため、その足で探偵会社へ行き、人探し調査を依頼しました。
4年間頑張ってきたのに国家試験を受けられなかった雅由さんの落ち込み具合や、
謝ってばかりいた状況から「自殺」の可能性も視野に入れて早急に調査を開始。
まだそう遠くへは行っていないはずという予測も含め、思い当たる場所をしらみつぶしに探していきました。
そして、雅由さんがレンタカーを借りていた情報を入手。
高速道路のサービスエリアに車を止めて寝ているところを発見しました。
両親が迎えに行くと、雅由さんは素直に「帰る」ことに従いました。
雅由さんは、自己嫌悪に陥り「両親に迷惑をかけた」という思いから、
衝動的に家を飛び出してしまったそうです。
責任感が強く、一生懸命だった分、国家試験を受けられなかったことが
雅由さんにとって耐えがたいショックだったのでしょう。
しかし、両親は「迷惑をかけられた」などとは、微塵も思っていません。
雅由さんが来年、また国家試験を受けるにしても、体調を崩すほどの無理はせず
しっかり自分の道を進んでいって欲しいですね。
(2019.03.19)