結婚のための交際期間

交際期間中、殆ど入籍準備をしていた加帆さん達は、デートらしいデートは
数えるほどしかありませんでした。
ゆっくりとした旅行にも行った事が無く、
お互いの親への挨拶をしに行くついでに何処かで1泊する程度でした。

入籍が決まってからは、結婚式の準備に追われる日々。
加帆さんは毎日結婚情報誌やネットで情報を集め「こうしたい」「ああしたい」と
大樹さんに意見を聞く事はなく、自分のやりたい事だけを伝え続けました。
優しい大樹さんは、そんな加帆さんの希望を全て受け入れてくれていました。
無茶すぎる要望にはストップをかけましたが、それ以外は多少予算がオーバーしても
「そうしようか」と快く承諾。
結婚式準備の手伝いも積極的にしてくれて、2人は出会ってから、
あっという間に結婚式の日を迎えました。

突然の2人だけの時間

結婚式が終わると、出会ってからこれまで、ずっと準備に追われていた2人に、
やっとゆっくりする時間が出来ました。
大樹さんは「ゆっくり新婚旅行の場所を決めて、少しのんびりしに行こう」と提案しましたが、
加帆さんには新婚旅行よりも優先したい事があったのです。それは「子ども」。
元カレの妻が妊娠したと聞いた加帆さんは、自分も早く妊娠して出産したいと考えたのです。
加帆さんはすぐに婦人科へ行き、妊活を始めました。
さすがの大樹さんも、これにはいい顔をしませんでした。
自分が離婚した原因であった不妊について、何も聞かぬまま「妊活」を始めた加帆さんに
「相談してからにしてほしかった」と、難色を示したのです。
それでも加帆さんはお構いなし。自分の予定優先で、どんどんと物事を進めて行きました。

普段の加帆さんは、大樹さんに対してまるで興味がないような態度で接していました。
そして、大樹さんがスキンシップを求めても「触らないで！」と怒る始末。
徐々に大樹さんは、加帆さんに対して何も話しかけなくなり
職場の近くのカプセルホテルへ泊まることが増加……。

結婚して3か月、加帆さんは相変わらず妊活に励んでいましたが、
それに対して大樹さんの方は、非協力的になりました。
そんな大樹さんに、加帆さんがヒステリックに怒るとすぐに家を出て行ってしまうように。
加帆さんは、妊活のために仕事を辞めて専業主婦でしたが、
ブランド品や洋服を好きなように買い、ＳＮＳには高級レストランのランチを投稿。
「こんなに愛される価値のあるいい女を逃した」と元彼氏に思われたい一心で、
現実とはかけ離れた幸せそうな日常をＳＮＳに投稿し続けていました。

元カレと同じ言葉で別れを……

そんなある日、大樹さんから「好きな人が出来たから別れて欲しい」と告げられました。
加帆さんは、「そんな勝手な事、許さないから！」と大樹さんを責め立てましたが、
「結婚生活に全く愛を感じなかったし、もうこのまま続けるのは無理だと思う」
そう言うと大樹さんは、その日も家を出て行ってしまいました。
そして加帆さんは「浮気をするなんてバカにするな！慰謝料をたっぷりとってやる！」と、
すぐに探偵に浮気調査を依頼しました。

調査の結果、大樹さんの好きな女性は仕事のパートナーで、最近働き始めた女性でした。
2人は仕事終わりに食事に行く事はありましたが、不貞行為などは一切なく、
その女性は、大樹さんの「好き」という気持ちにすら気が付いていないようでした。
大樹さんは、紳士的にその女性と接していたのです。

調査の結果を見て、加帆さんは愕然としていました。
それからしばらくして、大樹さんは家を出て行ってしまいました。
そしてそのまま離婚調停を起こされたそうです。

加帆さんは、自分の為だけに大樹さんを利用して結婚をしましたが、
結局、元カレと同じ理由でふられてしまいました。
加帆さんが本当の幸せを手に入れる為には、しっかり自分と向き合う必要があるのかもしれませんね。

(2019.03.13)