足りない資金の相談
伊藤さんは、最新の機材を導入するにあたり、
足りない分の資金は助成金を利用すると言っていました。
しかし、取引先から納品日を早めてほしいとの話があり
助成金を待っていたらその仕事を逃してしまうと寛治さんに相談をしてきたのです。
さらに「助成金が300万円入る予定だから、そのぶんだけ貸してもらえないだろうか」とも……。
寛治さんは悩みましたが、自分が後押しした責任も感じ、
家族に内緒で自分の貯金から300万円を貸すことに。
念のため、借用書を書いてもらうと、伊藤さんは用意してきていた会社名義の貯金通帳と印鑑を渡し
「この口座にお金が振り込まれることになっているから」と深々と頭を下げて帰っていきました。
音信不通になり、あわてて訪ねていくと……
しかし、予定日になっても助成金は支払われませんでした……。
さらに伊藤さんの携帯電話も工場の電話もつながらなくなってしまっていました。
紹介してもらった知人も「紹介した日来会っていない」とのこと。
嫌な予感がした寛治さんはすぐに車を飛ばして伊藤さんの工場まで様子を見に行きました。
すると、工場はもぬけの殻……さらに教えてもらっていた住所にも誰も住んでいませんでした。
「逃げられた」
寛治さんはすぐに警察に通報しましたが、
警察でも手掛かりは見つからず、「あきらめたほうがいい」と言われてしまいました。
さらに、助成金の申請をしていた形跡もなく、
工場は赤字続きで多額の借金をしていたことも分かりました。
真実はどこにあるの?
信頼していたのに裏切られ、お金まで取られたことに納得いかない寛治さんは、
どうしても伊藤さんを見つけ出したいと思い、探偵に人探し調査を依頼しました。
伊藤さんには中学生の子どもがいたことや、
奥さんが外国人だったことを頼りに聞き込み調査を行い、伊藤さんの足取りを追いました。
調査の結果、伊藤さんを見つけ出すことができました。
しかし、伊藤さんは借金苦を理由に自殺をし、すでに亡くなってしまっており、
残された家族は伊藤さんの実家近くで暮らしていることが分かりました。
それを聞いて寛治さんは、「なにか事情があったのかもしれない。」と、
それ以上は追及しないことにしたそうです。
今となっては真実を知ることはできませんが、
伊藤さんの分まで寛治さんは工場の仕事を頑張りたいと言っていました……。
(2018.06.11)