実家から離れて暮らし、年に数回しか帰省しない子どもが、知っておくべき両親のこと 家族のトラブル
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実家に戻る選択肢はなし

母が亡くなり、博英さんは父から
「お前は長男だし、こっちへ戻ってくる気はないか」
と相談されました。父は家業として大工を営んでいて、
その会社を継ぐことも視野に入れてほしいと言われたのです。
しかし、せっかく就職できた仕事を辞めることや、
妻の実家近くで暮らしている今の生活環境を変えることなど博英さんには想像もつかず、
「今は無理だ」と断ってしまいました。
それ以来、父からその話をされることはありませんでした。

母の葬儀の後、ある程度の片づけが終わり、博英さんは程なく元の生活に戻りました。
父のことは気になっていましたが、日々の生活に追われる中、
月に1度電話をするかしないかの連絡頻度に。
帰省も母が亡くなった年は、必要に迫られ何度か帰っていましたが、
その翌年お盆とお正月に帰ってからは、年に1度の帰省になっていました。

父からの突然の手紙

そんなある日、博英さんの元に1通の書留が送られてきました。
差出人は父からで、中身は1000万円の小切手と手紙が入っていました。
手紙には「病気で仕事が出来なくなってきた。何もしてやれなくて申し訳なかった」と
書かれていました。
病気の事を何も知らなかった博英さんは、急いで父に連絡を入れました。
しかし、実家も父の携帯も電話は繋がらず、博英さんはすぐに実家に向かうことに……。
実家に着くと、父の姿はなく、家の中は整理整頓され、大きな家具も処分されてました。

明らかに身辺整理をした上での失踪……
博英さんはすぐに警察に届け出をして、妻と妹に連絡。
人探しについてネットで調べた結果、探偵に人探し調査を依頼することにしました。
調査の結果、父は遠く離れた金沢で発見されました。

そこは、父と母が新婚旅行で行った場所で、家族旅行でも1度訪れたことがありました。
父は去年、スキルス性の胃がんが見つかったそうです。
その時点で、胃がんはかなり進行していたそうで、
それを聞いた父は1年かけて、会社や家の中の整理をして、
ある程度の片づけが終わり、死に場所を探していたとのことでした……。
お正月しか帰っていなかった博英さんも妹も、そのことに全く気が付かず、
父は元気にやっているとばかり思っていたそうです。

今回のことで、博英さんは父に「千葉の自宅近くに引っ越してきては?」と提案しました。
しかし、父は「それなら、母さんと過ごした家で最後まで過ごしたい。
お前は、自分の生活を大切に考えなさい。」と提案を断り、父はそのまま実家に戻ることになりました。

博英さんは、「これからは訪問看護やヘルパーさんなどを利用しながら、
自分と妹で出来る限り父のそばに付き添えるように考えていく」と言っていました。
そして、何かあったらすぐに入院することを父に約束してもらったそうです。

今後増加すると思われる、一人暮らしの高齢者。
自分の親が一人暮らしで、病気になり付き添いが必要になった時、
離れて暮らす自分たちには何が出来て、何をするべきなのか、
決して他人ごとではなく、きちんと考えていかなければならない問題なのではないでしょうか。

(2018.12.06)

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