母の変化に気が付いて
積極的に母の面倒を見てくれるようになった智久さんは、母と民男さんが住む実家によく来るようになりました。
智久さんはなにかあったときのためにと実家の鍵も持っていたので、
民男さんが残業の日には智久さんが早めに実家に来ていることもありました。
ある日、民男さんが母を買い物に連れて行くと、いつもしている指輪が母の指にないことに気が付きました。
指輪を外しているのを見たことが無かったので、「どうしたの?」と聞くと、
「智久が外してくれたの」と……。
その時は、「そうなんだ」と気にせずに話を聞き流していましたが、
その数日後、母が「大切な指輪がない」と民男さんに言ってきたのです。
民男さんは、「智久が外してくれたんだろ? 宝石箱を見てみなよ」と、母の貴金属が入っている箱を開けました。
すると、驚くことに宝石箱にあったはずの、いくつかの指輪やネックレスが消えてなくなっていたのです。
「ほかの指輪もネックレスもないよ。どこへしまったの?」と聞いても母は「分からない」と繰り返すばかり。
痴呆でほかの場所にしまったことを忘れてしまったのかと思った民男さんは
智久さんが来た時に「母ちゃんの指輪とか知らない?」と、確認をしました。
すると、智久さんは、「指輪? そんなの触ったこともないよ」と答えたのです。
母は智久さんが指輪を外してくれたと言っていたのに、何かおかしい。
……そう思った民男さんは、母にもう一度指輪を誰が外してくれたかを確認しました。
すると、「智久が外してくれた」と言うのです。
母の貴金属はどこへ消えた?
まさかとは思いましたが、民男さんは智久さんが貴金属類を持ち出して売ってしまっているのではないか? と疑うようになりました。
しかし、それを智久さんに聞いたところで、正直に言うはずはありません。
(そのうち残りの貴金属や時計まで持っていかれてしまうかも)
そう思った民男さんは、探偵に行動調査を依頼することに。
智久さんの給料日前を見計らい、母を買い物に連れ出して家を空け、
その間の調査をすることにしました。
調査の結果、民男さん達が出掛けてしばらくすると、智久さんが実家から出てきました。
智久さんは貴金属の買い取り専門店へ行き、その後パチンコへ行く姿が確認できました。
民男さんは、すぐに家に帰って母の宝石箱を確認すると
その前日にチェックした数よりもアクセサリーが減っていました。
民男さんは、まずは金目の物や価値のある物は自分が管理するように変更すると言っていました。
智久さんについては、せっかく母の手伝いをしてくれるようになった今の関係を
自ら壊すことはしないそうです。
しかし、もしまだ実家からの持ち出しを続けるようなら
報告書を突き付けてしっかりと話し合いをするとも言っていました。
2人しかいない兄弟。しかも同じ敷地内に住む家族として、
智久さんがしていることは信じられない行為です。
「金になる物」が無くなったとしても、兄弟でしっかり母の面倒をみて、助け合っていって欲しいですね。
(2019.04.02)