婿入りを承諾してくれた彼
それからも両親と私は「婿入り」についてずっともめていました。
「そんなこと聞いてなかった、あの場で急に言うなんてどういうこと? 私は家を継ぐなんて言ってない」と、私は何度も訴えかけましたが両親は一歩も引かずず「啓史さんは次男だし何も問題ないはず」と話は平行線をたどったままでした。
私が両親ともめていることは啓史にも伝わっていたと思いますが、土壇場で両親が(勝手なことを急に言い出した)という腹立たしさと、(プロポーズを白紙に戻されたらどうしよう)という怖さから、両親を説得できずに揉めていることを啓史に話せないでいました。
しかし啓史は「婿入りの件、よく考えたんだけど僕は次男だしそれもありかもしれないよ」
「最初は困惑したけれど、祐奈が本気で両親と話している姿をみて両親と祐奈の気持ちがよく分かったし、僕は祐奈の両親のこと好きだよ」
と婿入りを受け入れると言ってくれたんです。
啓史の両親も「あなたがそう決断したなら、それでいい」と言ってくれて、私たちの結婚を祝福してくれました。
その後話はとんとん拍子に進み、私たちは入籍。夫が結婚前に購入したマンションで暮らし始めて1年が過ぎたころに妊娠が分かりました。
しかし両親に妊娠を報告すると、母は夫に「同居したほうがいい」と言いだしたのです。
私は今住んでいる街の生活が気に入っていましたし、「同居までしなくていい」と軽く流していましたが、夫は
「今ならマンションも高く売れるし、子どものことを考えたら同居も悪くないのかもね。マンションが売れたお金で2世帯にリフォームしよう」
と、むしろ夫から説得される形で同居を前向きに考えることに……。
そして、2世帯リフォームを施工して同居生活がスタート。
無事に出産も終え、私たちは3人家族になりました。
休日には地元の友人家族が遊びに来てくれることも多く、家族ぐるみの付き合いも増えました。そして両親は孫の顔見たさに頻繁にご飯を作りに来てくれて、両親と食事をすることは日常になっていました。
夫は子どもが生まれてから「仕事をもっとがんばるからね」と残業をして帰ってくることが多くなり、休日は「ゴルフに誘われた」と家を空けることが増えていました。私はそれに対して「もっと家にいてほしい」と小言をいうようになっていました。
私は当時、なぜ夫が家を空けることが増えたのか本質を見抜くことができず、夫が抱えているストレスにも全く気が付くことができていなかったのです。
そして突然夫から
「この家は気が休まらない。心理的ストレスが限界だから離婚をしてほしい」
と告げられたのです。
それは私にとっては寝耳に水でしたが、夫は「子どもが生まれてしばらくしたころに、相談していた」と……。
確かに「同居していても、もっと家族3人の時間を大切にしたい」と何度か言われたことはありましたが、そこまで思い詰めているとは思ってもいなかったのです。
婿入り、同居のストレスを与えてしまっていたことを反省
私は離婚を考えるまで夫を追いつめてしまった原因は自分にあると謝罪し、「同居の解消」をして家族3人で再構築をしていきたいと伝えました。
しかし夫は聞く耳を持ってはくれず「お前のせいで全部失ってしまった」と家を出て行ってしまったのです。
そして離婚は調停へ……。
まるで人が変わってしまったような夫は、子どもに会いに来ることもなく「祐奈の産休が明けるまでには離婚を成立させたい」と、離婚を急ぐようになりました。
私は産休が明けるまでは離婚はせずに職場復帰をしてから離婚のことを考えたいと思っていたので、そのことを同僚に相談し、夫が普段どのように過ごしているのか様子を見てもらっていました。
ある時同僚にいつものように相談していると、同僚が「ちょっと言いにくいんだけどさ……」と夫が婚活している噂があると教えてくれたのです。
夫は会社の独身男性と一緒に婚活アプリに登録して、女性と会った話を飲みの席でしていると……。
同僚の話によると、婚活アプリをしている仲間内では「バツイチ、未婚、子どもは妻が引き取っている」というテイで、複数の女性とデートしていると自慢しているとのことでした。
(あんなに優しかった夫が浮気をするなんて考えられない……)そんな信じたくない気持ちとは裏腹に、私は夫のことをどんどん疑い始めていました。そして両親や同僚の後押しもあり真実を知るために夫の行動調査を探偵に依頼することに。
夫がデートをしそうな日を同僚に聞き出してもらい何日か調査。その結果、夫は毎回違う女性とデートをしていたことが分かりました。しかも夫はその女性を自分の家にまで連れて帰っていました。
私は両親からは離婚を進められていますが、実際どうしたらいいのか悩んでいます。
調停をどう進めていくかまだ頭の整理はできていませんが、この調査報告書があれば有利に動けることは間違いないので、もう少し冷静に考えたいと思います。
夫は「早く独身になって、次を探したい」と思っているはずなので、絶対に思い通りにはさせません。
婿養子に入り同居を受け入れてくれた優しい夫がまさかの浮気……。
同居のストレスがあったことは確かかもしれませんが、だからと言って浮気をしていいはずがありません。
夫婦関係の調停には「円満調停」「離婚調停」の二種類があり、途中から切り替える事も可能です。
祐奈さんには調査報告書があるのでどちらを選択しても有利に進むことは間違いはありません。この後すぐに啓史さんは自分の思い通りにならない事に気付く事になるでしょう。
(2022.08.12)