生活パターンを守りたい妻

残業が無くなった最初の頃の公樹さんは「何か手伝うことある？」と、
美喜さんに声をかけることもありました。
しかし、のんびり屋さんの公樹さんが何かを手伝ってくれるより、
一人でいつもの「学校」「習い事」「ごはん」「お風呂」の生活パターンを送る方が
美喜さんにとっては効率が良く感じられました。
美喜さんは「子どもの時間」を何より最優先で生活したいと考えていたのです。

帰宅してやる事がないと、公樹さんはすぐにゲーム機の前に……
子ども達は「パパとゲームができる」と喜んでいましたが、
「ゲームは宿題が終わってからの1時間」と子どもに教えていた美喜さんにとって、
その公樹さんの行動は「子どものためには良くない」ことでした。
だからと言って、仕事から帰って来た公樹さんに「ゲームをしないで」と言うのも違うと思い、
美喜さんは何も言わないでいましたが、イライラした気持ちは態度にも出てしまい、
それを感じた公樹さんは結果的に「仕事帰りに時間をつぶす」ようになったのです。

とは言え美喜さんと公樹さんは決して仲が悪いわけではありませんでした。
子ども達はパパによくなつき、夫婦の会話も多く家庭に問題は何もありませんでした。

謎のメッセージの送信者は誰？

いつものように公樹さんから近所で飲んで帰ると連絡があった日、
美喜さんに1通のメッセージが送られてきました。
そのメッセージには「離婚をしてほしい」とだけ書いてあり、美喜さんは「どういうこと？」と
すぐに返信しました。
しかし公樹さんから1時間後に来たメッセージには「どうしたの？今から帰るよ」とだけしか書いてなく、
離婚については一言も触れてきませんでした。
そして帰宅後も公樹さんに変わった様子はなく、いつも通りに過ごしていました。

しかし数日後、公樹さんが飲みに行っている日にまた「いい加減別れてほしい」と
メッセージが来ました。
美喜さんは、「帰ってきたら話しましょう」と返信をしましたが、それについて公樹さんは
「どうしたの？　何かあった？　もうすぐ帰るよ」と返事……。
その日の帰宅後も離婚については一言も触れてきませんでした。
美喜さんは（おかしい）と感じ、
（浮気相手が勝手にメッセージを送って、その後に削除しているのではないか？）と
疑うようになりました。
公樹さんに聞いたところですんなり認めるはずがないと考えた美喜さんは、
探偵に浮気調査を依頼して、誰が美喜さんにメッセージを送ってきているのかを
突き止めることにしました。

調査の結果、美喜さんの読み通り公樹さんは「飲みに行く」と言った日に、
特定の女性と会っていました。
行きつけの飲み屋で待ち合わせて、その後に彼女を送ってから自分の家に帰っていたのです。
調査期間中2人の「不貞行為」は確認出来ませんでしたが、
帰り道には手をつないだりキスをしたり、まるで交際したてのカップルのようでした。
そして、居酒屋で公樹さんがトイレに行っている隙に公樹さんの携帯電話をいじっている
女性の姿の証拠を取ることもできました。

美喜さんは公樹さんにその報告書と自分に送られてきたメッセージを見せて、
「どういうことか」を問い詰めたいと言っていました。
そしてその女性とは「一切の連絡を絶つ」ことを約束させたいと……。

もし、気が付かずに時間がもっと経ってしまっていたとしたら、
泥沼不倫になっていたのは目に見えています。
公樹さんは「ちょっとした出来心」だったのかもしれませんが、
妻と別れてほしいからと、こっそり不倫相手のスマホからメッセージを送るような女性…
深入りする前に美喜さんが発見してくれたことに公樹さんは感謝して、
今後一切、このようなことが無いようにして欲しいですね。

(2019.03.28)